日本の投資家はアジアの中で最も気候変動対策が進展

30 April 2025
AIGCC(アジア投資家気候変動グループ)の最新の分析によると、日本の投資家は気候変動リスクと機会の管理において、アジアの他地域をリードする潜在的な能力を有していることが明らかになった。本分析は、合計1,846兆円(12.4兆米ドル)の運用資産額に相当する、35の有力な日本の機関投資家を対象に実施された。

日本の機関投資家は、企業エンゲージメント、情報開示、政策提言などの主要な気候マネジメント指標で、アジア全体の平均を上回ることがわかりました。

今回の気候マネジメント指標調査は、日本国内の22のアセットオーナーと13の資産運用会社(以下、アセットマネージャー)を対象に実施され、気候リスクと機会の管理パフォーマンスを評価した。対象機関の資産運用規模(AUM)の中央値は約13.3兆円(890億米ドル)でした。

本調査のデータは、AIGCCの年次フラッグシップレポート『アジアにおける投資家の気候変動対策の現状』第6版の日本市場版レポート『投資家の気候変動対策の現状-日本市場の動向-』としてまとめられ、日本の投資家がアジア地域の投資家平均を上回る以下の点を示しています:

  • ポートフォリオ排出量削減目標:日本の投資家の63%(35社中22社、2兆米ドルのAUM)が、2030年または2035年までのネットゼロ目標を設定しています。(アジア平均:46%)
  • 気候ソリューションへの投資:43%の日本投資家が気候ソリューションまたは移行金融への投資目標を設定しています。(アジア平均:35%)
  • スチュワードシップ報告:63%がスチュワードシップ報告を実施し、気候変動対応計画の推進に取り組んでいます。(アジア平均:39%)
  • 国際基準に沿った開示:72%の日本の投資家が国際サステナビリティ基準理事会(ISSB)や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などの基準に沿った開示を行っています(アジア平均:54%)。さらに、この指標では、アセットマネージャーがアセットオーナーを上回る結果を示しており、ポートフォリオの炭素排出量を測定・開示しているアセットオーナーは27%、アセットマネージャーは67%に達しています。

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一方、気候ガバナンスや投資において、改善の余地がある分野も明らかになりました。例えば:

  • 経営陣報酬と気候目標の連動: 日本の投資家の平均スコアは20%(アジア投資家全体の平均23%と比較)。気候パフォーマンスを経営陣の報酬と連動させているアジアの投資家は、日本の投資家より平均でわずかに先行しているものの、その差は大きくありません。このことは、日本の投資家を含むアジア全体の投資家にとって、さらなる進展の可能性が残されていることを示唆しています。
  • 資産レベル目標ネットゼロ投資フレームワーク0などに沿った資産クラスごとの目標設定はまだ不足しており、アセットオーナーでは5%、アセットマネージャーでは46%でした。

AIGCCのCEOであるレベッカ・ミクラ=ライトは次のように述べています:

「日本で頻発する気候変動の影響は、投資家にとって重大なリスクです。日本の投資家は、これらのリスクと機会を管理することで市場をリードし、長期的な利益を保護・向上させる可能性を秘めています。AIGCCのデータは、日本の投資家が気候変動対策の多くの分野でアジアの投資家をリードしていることを示しており、地域の気候リーダーとなるための大きな機会があることを意味します。」

また、ニッセイアセットマネジメントの社長、大関 洋氏は次のようにコメントしています:

「日本では、気候変動のリスクと機会の開示が進んでおり、我々はそうした動きを歓迎しています。近年の自然災害の頻発は、人為的要因による気候変動のリスクが、日本はもちろんこの地球上に住むすべての人々に及んでいることを実感させます。 気候変動に対する行動を起こすことで、単にリスクを軽減するだけではなく、日本の低炭素未来に向けた投資機会を積極的にとらえることに通じます。日本では、例えば、再生可能エネルギーへの投資や、海面上昇や熱ストレスに対応する気候適応に貢献する企業の取り組みにも資金を投じていくことが重要になっていくでしょう。 私たちは、日本の投資家として、気候変動に配慮した投資の先頭に立つ独自の機会を持っていると信じており、その役割を果たすことにコミットしています。」


AIGCCは、2025年4月30日に東京で開催する投資家向けブリーフィングにて、本レポートの詳細な分析を公表します。パネルディスカッションには、ニッセイアセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、MSCIの気候変動専門家が登壇予定です。

本レポートはMSCIの協賛により作成されました。

完全版はこちらからご覧いただけます。(英語版)