気候変動による被害と物理的影響が、 現在の世界的な政策軌道を維持した場合、 日本の経済から9.2兆米ドルを消失させる可能性
17 December 2024
141の中央銀行および金融監督機関のネットワークが発表した新たなシナリオによると、現在の世界の気候変動目標の下では、日本のGDPは大幅な経済減退に見舞われることになると予測されている。
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現在の政策の下では、日本経済は年間GDPの約10%を失う可能性があり、2050年までにその総額は約9.2兆米ドル(約952兆円)に達すると予測されている。
アジアは世界で最も気候変動の影響を受けやすい地域の一つである。日本の上位10の貿易相手国のうち7カ国がこの地域に位置している。気候変動への野心が不十分であることに起因する経済的影響は、米国や欧州よりも日本やアジアその他の地域の方が高いと予測されている。
気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)*による新たな経済モデルでは、パリ協定に基づく現在の国が決定する貢献(NDC)を含むさまざまな気候変動シナリオを分析している。
NGFSのモデルでは、ネット・ゼロへの移行シナリオも含まれており、日本と世界の経済にとってはるかに優れた経済的結果を示している。
AIGCCのCEOであるレベッカ・ミクラ=ライトは次のように述べている。
「日本は、科学に基づく移行への道筋に沿うことを遅らせる余裕はありません。
日本の広範なアジア地域への物理的被害は、今年猛烈な勢いで続いてきました。台風は日本の製造業に大きな被害をもたらしました。また、記録的な降雨量をもたらした高い海面水温も深刻な洪水や土砂災害を引き起こしました。これらの影響は、今後数十年間、より壊滅的なものとなり、複合的な影響を及ぼし続けるでしょう。
日本は、再生可能エネルギーやその他の低炭素ソリューションを含む、技術とイノベーションにおけるリーダーとしての地位を活用するための大きなインセンティブを持っています。NGFSのネット・ゼロ・シナリオにおける移行は、2050年までにGDPに年間約1,300億米ドル(約13.6兆円)のプラスの影響をもたらすと予測されています。
日本の将来を安全に守り、気候危機のために危機に瀕している数百万の人々の命を守るために、日本は野心的な気候政策に支えられた強力な中期排出削減目標へのコミットメントにおいて、主導的な役割を果たさなければなりません。」
インベストメント・スチュワードシップ 日本ヘッドであるリーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)の福田愛奈氏は次のように述べている。
「現在検討されている「2050年ネットゼロへの直線的な経路」について、気候変動による深刻な影響を回避するために十分であるかどうかだけでなく、今後日本が経済的好機を捉えることができるかについても、さまざまな声が上がっています。
私たちは国会議員や省庁の政策担当者との対話を通じて、一貫して強調してきたことがあります。それは、1.5℃の目標に沿った政策環境を整備することが、日本の技術競争力やグローバルなサプライチェーンでの地位、さらにはネットゼロに向かう世界の中で金融市場での存在感を維持するために不可欠であるという点です。これらは、日本が経済的なレジリエンスを保ちながら、技術革新とイノベーションを牽引していくために極めて重要であると考えています。」
* この分析は、日本銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、中国人民銀行、オーストラリア準備銀行、インド準備銀行、米国連邦準備制度理事会など、141の中央銀行からなる気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)が発表した新たなデータに基づいています。気候変動による広範な経済的影響、すなわち、極端な気象現象に関連する費用と、労働、資本、土地、自然生産性に対する間接的な影響を計算しています。