日本の資本市場は、自然関連リスクに対するエクスポージャーを有する ― AIGCC(気候変動に関するアジア投資家グループ)による新たな調査―

4 June 2024
日本の資本市場と企業、特に、エネルギーセクターと食品・飲料・たばこセクターは、中程度~高度に自然に依存しています。AIGCCが本日発表するデータは、日本の公開株式が自然関連リスクに対して著しいエクスポージャーを有し、日本の株式市場の時価総額の18%(9,380億米ドル)が、自然に高度に直接依存しているセクターの企業で構成されていることを示しています。

日本の資本市場と企業、特に、エネルギーセクターと食品・飲料・たばこセクターは、中程度~高度に自然に依存しています。

AIGCCが本日発表するデータは、日本の公開株式が自然関連リスクに対して著しいエクスポージャーを有し、日本の株式市場の時価総額の18%(9,380億米ドル)が、自然に高度に直接依存しているセクターの企業で構成されていることを示しています。

例えば、日本のエネルギーセクターは、東京株式市場(TSE)の合計時価総額の5.5%(2,840億米ドル)を占めますが、エネルギー企業、特に総合石油ガス産業は、地下水や表流水に高度に依存しています。また、日本は、エネルギー輸入における貿易活動が活発なため、海外市場の自然関連リスクや機会に対してもエクスポージャーを有しています。

アジア太平洋(APAC)全体では粗付加価値(GVA)の20%(6.72兆米ドル)が、自然に高度に直接依存する経済セクターに由来しています。例えば、肥沃な土壌、清浄な水、受粉、気候の安定への依存が挙げられますが、いずれもアジア太平洋の多くの地域で深刻な劣化・低下がみとめられています。

それに対して、日本ではGVAの12%(6,030億米ドル)が、自然に高度に依存するセクターに由来しています。

  • 例えば、日本の食品・飲料・たばこセクターのGVAへの貢献度は2.9%で、APAC(2%)や世界全体(1.9%)に比べて比較的高くなっています。このセクターの企業は、生産プロセスにおいて、直接投入資源としての表流水と地下水に高度に依存しています。これらの生態系サービスの喪失は、生産プロセスに大きな混乱をもたらすでしょう。
  • 日本とAPACの差は、農業セクターに対する日本のエクスポージャーがAPACより低いことに起因すると考えることができます。日本経済の、農業セクターに対する依存度は比較的低く、日本のGVAに農業セクターが占める割合は、0.9%(440億米ドル)です。
  • APACでは、農業セクターがGVAに占める割合は、5.3%(1.78兆米ドル)です。
  • しかしながら、自然に中程度依存しているセクターの比率は、APAC全体(33%)と比べて、日本の方が高くなっています(38%)。

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日本の自然関連リスク管理の進展

日本政府や日本の企業・投資家は、自然の劣化を食い止め自然関連リスクを軽減する取り組みを進めています。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)を早期採用した企業の中では、日本企業の割合が最も大きく、世界全体の早期採用企業の25%を占めます。

また、日本は経団連自然保護協議会(KCNC)、農林中央金庫、MS&ADインシュアランスグループを共同招集者とするTNFDコンサルテーショングループを立ち上げ、民間セクターの組織を集めて、事業や金融に関する自然関連課題や今後のTNFDフレームワークの採用について話し合っています。

Monica Bae (AIGCC Director of Investor Practice)は、次のように述べました。「日本の経済は、アジア太平洋地域の他国と同様に、健全な生態系に強く依存しています。自然の喪失は、財務リスクとなり、無視することができない脅威です。AIGCCの『転換点に立つ自然』レポートの日本版での新たな分析は、生態系の劣化がポートフォリオに与えうる影響を日本の投資家が評価するために重要な最初のステップを提供します。

ネイチャーポジティブな未来へと移行することにより、投資家に多大な機会がもたらされます。自然関連リスクを率先して投資戦略に組み込むことによって、日本の投資家は、サステナブルでレジリエントな未来で成功する状況に身を置くことができます。AIGCCは、日本の政策立案者、投資家、企業がこれまでにとった迅速な行動を高く評価しています。そして、ネイチャーポジティブな実践を促進する政策を支持し、自然に根ざした解決策への投資を奨励することによって、日本の皆様の取り組みを積極的にサポートします」

川添誠司氏(AIGCC森林・土地利用ワーキンググループ投資家共同議長*)は、次のように述べました。「アジアの多くの国のように輸入/輸出に依存している国は、自然資本に関連するエクスポージャーを有しており、隠れる場所はありません。AIGCCとPwCによる新たなガイダンスから、投資家が企業の事業にとって重要なエクスポージャーを理解する必要があることは明らかです。いくつかの主要な企業や投資家がTNFDの早期採用を決めていることは心強いことであり、日本は政府からの優れた政策支援を受けて模範となっています。私たちは、投資家と企業が、自然資本の評価および開示に一段と積極的になれることを願っております」。